LIVE REPORT

<Chazawa Ultimate Dragon 30 – Stage1 –>

10/20(Fri)

CRYAMY/シンガーズハイ【TWO MAN】

この日は、Chaseのリュウノヒラ氏の生誕30周年を記念しての企画。彼は様々なバンドやイベントを影でサポートしたり、東京のみならず日本全国のインディロックバンドカルチャーを縁の下で、時には表立って支えてきてくれている人物。常にロックンロールを、ポップミュージックを初めて聴いた時の衝撃やときめきを、持ち続けられている人物だと思う。そのピュアネスは、こんがらがった現実の中でおのずと摩擦係数を上げてゆくけれど、いろんなモノにぶつかりながらも、生身でリアルなコミュニケーションを築き上げて行く。それが彼の魅力。ちなみに私の彼との最初の印象深い想い出は、朝方に何故かお互いかなり酔っ払いながら、大声出し合っていたこと。そんな彼の生誕祭、第一部DaisyBar、第二部BASEMENTBAR/THREEの二部構成で夜を徹して行われる大イベント。その顔触れを見ただけでも彼がどれだけの熱と時間をバンド、そしてそのリスナーに捧げてきたがわかるし、彼がそうしたバンド達から愛されてきているのかもわかる。その第一部、STAGE1、ここDaisyBar。CRYAMYとシンガーズハイの2マン!!。彼だからこその2マン。チケットは勿論SOLD OUTで、開演前から会場は満員。そしてまずトップはシンガーズハイ。リュウノヒラ氏の企画でもDaisyBar出演経歴あり、また昨年2022年7月にはDaisyBarで大事な初のワンマンも開催してくれ、見事SOLDOUT。今夏は様々な大型フェスにも引っ張りだこ状態な彼等。この日は、そんな今の勢いそのままに、ここ一年で得たであろうバンドの貫禄も感じつつ、DaisyBarに出始めた当初の頃のギラギラ感もしっかりあって、やっぱりライブをいつ見てもカッコイイバンド。CRYAMYへのリスペクトと緊張感もありつつ、パフォーマンスが始まればしっかりとシンガーズハイのライブのカッコ良さ、魅力を出し切って、超満員となった会場をキッチリ沸かせてくれた。そしてCRYAMY。シカゴでスティーヴ・アルビニとのレコーディングを終え、帰国して間髪入れずでのライブ。バンドが音を鳴らし始めた瞬間、そのザラついて乾いたバンドサウンドが、シカゴのアルビニのスタジオの空気を運んできてくれている様にも感じた。そして、この日はそのスタジオで録音された楽曲メインのセット。昨今、ストリーミング配信などされて無くてもある程度バンドの楽曲の予習が可能な環境にある我々にとって、CRYAMYの様にキャリアを築いてきているバンドの未知の楽曲を生でリアルタイムに体験できる機会はなかなか無い。勿論、リスナーによって何を求め来るかは、それぞれであるので、戸惑う事もあるだろうけれど、そうした中でこうしたセットリストを組むCRYAMYの潔さ。シカゴへ行ってレコーディングを行う事もそうだけれど、自分達の過去を拡大再生産して行くのではなく、常に新しい挑戦をしながら進み続ける。オーディエンスも彼等の曲をしっかり受け止めようしているのが伝わってくる。そして徐々にバンドのGROOVEが会場全体に伝わり、当初は只々圧倒されていたオーディエンスもしっかりとバンドのサウンドを吸収しつつ、更に押し返して行く様に会場全体がうねってゆく。私にとってのアルビニというとNIRVANAの「インユーテロ」、PJ ハーヴェイの「Rid of Me」と言う2枚なのだけれど、どちらもあまりHappyなアルバムではないので、アルビニというと凄くダウナーなイメージを想像してしまう。けれど、CRYAMYはそんな乾いてザラついた一瞬陰鬱にも感じる様なサウンドをも鳴らしつつ、最終的に開放感あるポップなカタルシスを感じさせてくれる。そして、その先の光を感じさせてくれる圧巻のパフォーマンス。おのずと新作への期待も膨らむライブ体験だった。そして2マンという事でそれぞれのリスナーが入れ替わったりという事でもなくオーディエンスもそれぞれのバンドをしっかりと受け止めているのを感じた。それはリスナーの感度と両バンドの力量でもあると同時にリュウノヒラ氏がいたそこにいる事によっての作用でもあると思う。彼の30歳の誕生日という事ではありつつ、様々なストーリーとエネルギーがエモーショナルに交錯した特別な一夜になった。(加)