LIVE REPORT

<ブリキオーケストラ LAST ONEMAN>

5/15(Sun)

ブリキオーケストラ

以前にも書いているかと思うのだけれど、ブリキオーケストラのギターボーカルの多田羅とDaisyBarは、彼が以前組んでいたバンド時代からの付き合い。そのバンドが活動休止し、そこから、ほんの数ヶ月後に彼から新しいバンドを組んだという事で連絡があった。そのバンドが、ブリキオーケストラ。それが、2010年の事。その以前組んでいたThe Jerry of Beat’sというバンドは、全身ロックンロールの運動神経で出来ている様なバンドで、性急なビートと重いリフとシャウトで、まさにノンストップなロックンロールを放つバンドだった。そして、このブリキオーケストラも同じくスリーピースのロックバンドと言う事で、そのライブを観るまでは、そうしたロックンロールのイメージを追ってしまった所もあった。しかし、実際初めて見たライブでは、こちらの想像を良い意味でひっくり返す、まったく新しいバンドであった(今思えば当り前の事ではあるのだけれど)。以前のバンドでは、ジャンルというか、形式としてカテゴライズされていたロックンロールを演奏していて、それがその三人でのリアルではあったし、こちらにもリアルに響いていた。しかし、それが 無くなった時、このブリキオーケストラで演奏されたのは、より唄もメロもキッチリと聴かせる楽曲。そうしたブリキオーケストラを印象づけたのが、まさに「ロックンロール」というナンバー。最初のライブで初めて耳にして、その時に一発で突き刺さった曲。「君と僕を繋ぐ唄をロックンロールと呼ぶんだろう」という必殺のフレーズを持つこの曲。本質としては変わらないけれど、そのロックンロールを再定義したというか、もう俺がこのソウルを込めてやったらなんでもロックンロールやろ、とも言う様な自由さと、良い意味での開きなおりによって得た自信も強く感じた。そうした新たなロックンロールと共にブリキオーケストラが一歩を踏み出してから、早6年。ここまでには、メンバーチェンジなどあっ たけれど、これまで続けてきた彼等。ここ最近のブリキオーケストラは、更に自由度を増したというか、アイリッシュや、レゲエなど、多様な音楽性を取り込みながら、変化しつつも、変わらず軸に、多田羅の唄とメッセージがきちんとあり続けた。更に肩の力も抜けた感じで、それがよいな、と思っていた。そうした変化のなかでの今回のベース高嶋の脱退の発表。それに伴い、バンドも暫くライブ活動休止発表。そして、この日がその活動休止前のワンマンライブとなった。実際その活動休止をどう受け止めてよいのか、この日まで判断がつかない所もあった。そうして迎えたこの日。ライブは二部構成となっていて、まず一部は三人編成で。こちらは、どちらかと言うと、初期の楽曲が多めの選曲で、後半はロ ックな盛り上がりも見せて、一部から熱いステージでリアルに会場も熱気あふれ、熱も上がった。そして第二部は、三人でのアコースティック編成からの、四人編成でのライブ。二部の四人編成では、2月にもお披露目された第四のメンバー、ジュンヤベイベーがギターで参加。最近の、ダブや、レゲエと言ったゆったり目で且つカラフルな楽曲中心にきっちり聴かせつつ、grooveしてゆく。そして、最後は、普段は絶対にしないと本人達が言っていた、コール&レスポンスもありで、会場一体となって本編終了。たっぷりと彼等の楽曲に浸りながら、言葉とメロが耳に残る名曲が多いな、とあらためて思った。それが聴けなくなるとなったら惜しいと思った。しかし、この日、アンコール、最後に演奏されたのが、彼 等の初ライブでも演奏された「ロックンロール」。多田羅は、これからもこの歌を唄い続けると宣言。そうして唄われた「ロックンロール」の歌詞はまさに、どんな形であれ、ロックンロールし続けるという宣言でもあるし、そうした歌詞も含め、感動的に響いた。当初このワンマンが決定した際は、その活動休止も、解散に近い様な、もう少しシリアスでネガティブなニュアンスを持っていたと思う。しかしこの日、彼等がMCで語っていた中には、そうしたネガティブな部分は薄れていた。そして、この「ロックンロール」で締め括られたこのワンマン、それは、またすぐ戻ってくる、と言う事だとも感じた。きっと会場につめかけた多くの人が、それを感じたと思う。そんな新しい何かの始まりを感じさせるワン マンだった。