LIVE REPORT

<DaisyBar 16th Anniversary ~extend~>

4/30(Fri)

橋本薫(Helsinki Lambda Club) / スズキユウスケ、スズキナオト(オレンジスパイニクラブ)

元々、昨年3月オレンジスパイニクラブのツアーファイナルのWWWで実現する筈であったオレンジスパイニクラブとHelsinki Lambda Clubの2マン。延期の末、実現には至らず、今回、DaisyBar16周年月間の最終日のイベントとして、フロントマン同士のアコースティック、弾き語りの2マンという形での顔合わせが実現。と、言う事で迎えたこの日、まず登場したのは、スズキユウスケ、スズキナオト。オレンジスパイニクラブの二人。一曲目はユウスケがギターを置き、タンバリンを叩き、唄ったりしていたが、基本は二人ともアコースティックギターを持ち、ボーカル&コーラスというスタイル。あらためて彼等の曲の良さを見せつけられた。ホントどの曲もよい。よいってどうよいんだ!と、自分の語彙力の無さにビックリするが、彼等の次にステージに立った橋本薫が、この日の二人のライブを受けて、MCで、彼等の曲はどの曲もパンチラインが散らばっててよい、と言うような趣旨のことを語っており、まさに、それ!と思いきり頷いてしまった。彼等が改名前に、弾き語りでやっていたという曲が披露されたのだけれど、これもまた引っかかるフレーズ満載で良い曲。唄われるストーリーは、かなり重い内容で、描写もちょっと生々しく、そこを拾って唄にするのか、という様なインパクトもあるのだけれど、それを変にドラマチックにするのでなく、平熱でサクッとポップに唄う。そこで安易な頑張れソングに振れて行かない所がカッコイイ。それで、聴き終えた後には何か少し元気が出る。聴く人によって、例えば性別だったり年齢だったりで、刺さるフレーズも違うんだろと思う。個人的にもまた次に聴いた時には違う箇所で引っかかるのかも、とも思う。そうした多面性もまさにポップという事でもあると思う。そして、こうしたネイキッドな編成だったことによって、彼等のコーラスワークや、ギターのフレーズなども際立って、それらもまたグットくるパンチラインとなっていた。そして二番手トリ、Helsinki Lambda Clubより橋本薫。バンドではデビュー前よく出演してくれていて、DaisyBarでのライブは印象的なライブが多かったと言ってくれていたけれど、当時のDaisyBarのアクの強い彼等より上の世代のバンドともがっつり対バンしてくれていた。当時から、それだけの音学的体力があるバンドだったんだと思う。そして、今回弾き語りという形で久々の登場。弾き語りでは初。たまたま、前日ストリーミングサービスでランダムにプレイリストを流し聴いていて、この曲カッコイイなー、イギリスの新しいバンドの曲かな、と思った曲が薫君のソロプロジェクトのLittle Toothの新曲だった。故に、個人的にもこの日のライブに対する期待も必然的に高まった。そして、当日演奏された楽曲はヘルシンキの曲メインだったけれど、さすがの貫禄溢れるパフォーマンス。そこにポップが本来持つ毒がふんだんに散りばめられていて、痛快。その中で、特に歌詞も凄いし、状況的にもジャストだと思ったのがShrimp Salad Sandwichという曲(このあとでチェックしてみたら昨年リリースされたヘルシンキのアルバムに入っていた曲で、追えてないかった事を後悔)。ポリティカルな事柄を風刺している楽曲でもあると思うし、我々への警告にも聞こえる。そして、ポップソングとしてしっかり成立させている。以前だったら清志郎や、桑田佳祐などが、ポップ、ロックのメインフィールドでも行っていたことだけれど、最近はメインストリームや、こうしたライブハウスシーンでもなかなか聴かなくなった気もする。なので、こうした曲をきっちり書けて歌えるというは、それも凄いし、アーティストとしての胆力も要る。また、コロナ禍の中で、このスピード感で世に届けるのも凄い。この日、そうした二組のパフォーマンスを観て、今のインディロックシーンのなかで本当の意味で良質なポップミュージックを生み出だせる希有な二組が見事に揃った、かなり贅沢な一日だったとあらためて実感。そして日本のポップミュージックもまだまだ豊かだし、これからまたドンドン面白くなってゆくと確信。(加)