時速36km×CRYAMY 「POWERFUL SUN,NOISY MOON TOUR – EXTRA -」

時速36kmとCRYAMYのスプリットツアーのファイナル、エキストラショーとして組まれたこの日。9月にはリキッドルームも売り切ったツアーのエキストラショーのキャパとしては小さくはあるのだけれど、この2組のツアーをDaisyBarで締め括ってくれるという事は本当に感無量。そうしたなかでバンドやお客さんにも、ライブ本来と別の所で気を遣わせてしまった事があったのはハコ側としても反省材料。コロナ禍が始まって、もう3年も経とうとしていて、ライブハウスも徐々に3年前の形へとシフトして行っているタイミングで、過渡期でもある。3年もあれば、それ以前のライブハウスを体験したことのないリスナーがいるのも当然だし、3年間いろんな事を我慢したことを爆発させたいリスナーがいるのも当然だし、このパフォーマンスを観たら自然と体が前のめりなってしまうのもわかる。そんないろいろな経験、思いを持った人達が集まるのもまたライブハウス。全員が同じライブを体験している様でも、極端な話身長差だけでも聞こえる音も違う訳で、それぞれがそれぞれの体験をするのがライブハウスでもある。そうした中でアーティスト、リスナー、ライブハウスで作って行く一夜のGrooveがある。ライブハウスやアーティストがこう聴いて欲しいな、こうして欲しいということも勿論あるし、こうあるべきみたいなのもあるけれど、そこは押しつけるものではないとも思う。それぞれがいろいろな経緯でここにきているという、想像力を働かせながら、アーティスト、リスナーそしてハコ側と、これからもいろいろな体験をしながら、自分の頭で考えながら、またそれぞれのGrooveを作り上げて行く時期でもあるのかなと思った。と、そんな事も考えながら、私もかなり個人的な体験としてのレポート(毎回そうではあるけれど)。二組を続けて観て、人との別れ、後悔、約束について、いろいろなことが頭を巡った。別れ際、自分は何故あの時、ちゃんと言葉をかけてあげられなかったんだろうという後悔。人との関わりで何からの後悔は必ずあるだろ。それでも、CRYAMYはその時伝え切れるだけの事は伝えきろうとする。勿論届ききらないことがあるのも理解しているとも思う。このライブハウスに集まった奴らは、この瞬間は誰も悪くは無い。ひとつひとつ言い切り、自分の正義をぶつけて行く。その姿に感動する。自分もそれができていたら、とも思う。けれど、後悔は必ずある、と、声をかけてくれる様でもある。そしてその後悔も、それを受け入れることで、いつかどこかで回収される筈でもあると気付かせてくれる。そして時速36km。続く日々のなかでいろいろとキツいこともあるけれど、約束を積み重ねながら、日々が続いて行くからこそ、新しい約束もできるし、人生そんなに悪いもんでもないでしょ、また会いましょう、と、気軽に問いかけてくれる。その日常が必ず続くものでもないし終わりもどこかにあって、その約束が必ず果たせるものでもないというリアルな現状認識が根底にある。だからこその軽やかさ。悲観と楽観を行ったり来たりしながら、その刹那を軽やかに鳴らし、ズシッと届けてくれる。そんな軽やかさをみて、こちらの重力も軽くなる。この日の2組のパフォーマンスとそれに応えるフロアーを観ている内に、自分の中に巡っていたいくつかの事柄が少しずつ自分の中に受け入れられてきたし、それが軽くなった。CRYAMYと時速36km、進んでいるベクトルは一緒だけど、いろいろと対照的だなともあらためて思った。だからこそ、この2組の組み合わせだからこそ、感じられた思いというか、湧き上がる感情があった。この2組が、今のシーンの中で重要で凄いことをやっているという大前提がありつつ、かなりパーソナルな内容になってしまったけれど、あらためてCRYAMYと時速36km、そして(この場いなかった方も含め)この一夜を共に作ってくれたリスナーに感謝。(加)