この日は、KOTORI、時速36km、それぞれのフロントマン横山優也と仲川慎之介、二人による弾き語り2マン。1月に予定されていたイベントであったが、横山の体調不良により延期となり、あらためて設定されたのがこの日。2マンという事でまず仲川、そして横山という順でそれぞれのステージを行った。どちらも、唄と曲の強さを存分に聴かせてくれ、それぞれ新曲も披露するなど弾き語りならではのサービスもあり、素晴らしいパフォーマンスを披露してくれた。1月、当日に延期が決定され、急遽仲川のワンマンとして代替えイベントを行うことになった際、そこで仲川がそのワンマンに付けたイベントタイトルが「東京より愛をこめて」。KOTORI の昨年リリースされたアルバムのラストを飾る曲。このタイトルを付ける仲川のセンスというか心意気も心打つ。そしてそれを配信で見て熱が下がった(ような気がした)という横山が、自ら本編最後にその「東京より愛をこめて」を披露して締めくくり、それもまたグッときた。そして圧巻だったのは、アンコール。二人揃ってステージに登場。まずはくるりの「ロックンロール」をカバー。アコースティックギター二本が絡み、そこに二人の歌声が重なり、音数自体は少ないのに、そのパワーが圧倒的。そして、時速36kmの「夢を見ている」、KOTORIの「素晴らしい世界」とそれぞれの楽曲を二人で演奏。アンセムといってよいこの二曲を連続して本人達の唄と演奏で聴けるという事は、これからもなかなかないだろう。横山、仲川共に1995年生まれとの事。オアシスのファーストより後なのか!と、今これを書いている1970年生まれの私などは軽くショックを受けつつ、そんな私にも世代を超えて彼等の楽曲は響いている訳だけれど、そんな我々の様な世代からすると(というか私個人かもしれないけれど)、彼等の生まれた90年代半ばにはいろいろな大きな変化があった。終わりなき日常などといわれていた90年代前半までと打って変わって、そこからこの30年近くでテロ、大震災、直近でもコロナ云々や、戦争など、非日常が次から次に起こっている。現在に至るまでいろんな事が変動してきている。だから、彼等の言う日々と我々の経験してきた日常とは違うものになってしまっているのかな、とか、変化とは何か、みたいな事を二人の楽曲を聴きながら思う。そして、そうした時代の変化のなかで、日常を取り戻そうとは言うけれど、結局ミニマムな私達個人の日常なんて変わっていないのではないか、とも思わされる。変化に柔軟にはいたいけれど、変化や新しさだけを目的にするのも何か違う気がするし、これからは○○の時代と言葉に出してしまった瞬間に、時代遅れ感が漂う。結局答えはないのだけれど、そんな2022年の日常にリアルに響く二人の唄声。「夢を見ている」のサビにもグットくるし「素晴らしい世界だ」と力強く唄う姿にもグットくる。何かそうした楽曲同士、アーティスト同士の相互作用、そしてお客さんのグルーヴと、いろいろなものが混じりあって、反響しあってパワーをあたえてくれた。いろいろあるけど、なんだかんだ言っても、やっぱりこうした一瞬一夜があれば最高、と言うのを体現したようなライブ。1月からのこのイベントを無事着地させ、まさに大団円だった。(加)